社会福祉法人の会計・税務の特徴と、税理士に頼めること
社会福祉法人の経理には、会社にはない決まりごとがあります。
- 社会福祉法人会計基準 — すべての社会福祉法人は、厚生労働省令の「社会福祉法人会計基準」に従って会計処理をします。作成する計算書類は、資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表の3つです。法人全体のものに加えて、事業区分(社会福祉事業・公益事業・収益事業)ごと、拠点(施設や事業所)ごとにも作成し、附属明細書と財産目録もあわせて作ります。
- 所轄庁への届出と公表 — 計算書類などは、毎会計年度が終わってから3か月以内(6月末まで)に所轄庁へ届け出ます。届け出た計算書類はインターネットで公表されます。
- 指導監査 — 所轄庁による一般監査は、運営に大きな問題がなければ3年に1回が基本です。会計監査人の監査を受けている法人は5年に1回まで、公認会計士や税理士などの専門家から財務会計の支援を受けて所定の書類を提出した法人は4年に1回まで、所轄庁の判断で周期を延ばせるとされています(厚生労働省「社会福祉法人指導監査実施要綱」より)。
- 法人税・消費税の扱い — 社会福祉法人に法人税がかかるのは、法人税法で定められた収益事業(34業種)から生じた所得だけです。社会福祉法でいう「収益事業」とは範囲が一致しないため、個別の判定が必要です。消費税は、社会福祉事業の多くが非課税ですが、課税される売上がある場合は申告が必要になることがあり、補助金や寄附金が多い法人には特有の調整計算があります。
税理士に頼めることの例です。
- 会計基準に沿った記帳と月次のチェック: 拠点やサービスごとの区分、会社にはない勘定科目(基本金、国庫補助金等特別積立金など)の処理を整える
- 決算と計算書類の作成支援: 計算書類・附属明細書・財産目録を、理事会と評議員会の日程に間に合うように仕上げる
- 指導監査に向けた会計面の点検: 経理規程どおりに処理されているか、証拠となる書類がそろっているかを事前に確認する
- 収益事業の判定と税務申告: 法人税・消費税の申告が必要かどうかの判定と、必要な場合の申告
- 社会福祉充実残額の確認: 毎年度の算定と、残額が出て社会福祉充実計画を作る場合の専門家としての確認
一定の規模を超える法人に義務づけられている会計監査人の監査は、公認会計士または監査法人の業務で、税理士は担えません。
経営改善で税理士ができること
社会福祉法人の収入の多くは、介護報酬や委託費など国の制度で決まる単価にもとづくため、自分たちで値上げをして収支を改善することが難しい構造です。そのぶん、数字を細かく見て手を打つことが重要になります。税理士が関われるのは次のような部分です。
- 拠点・サービスごとの収支の見える化 — 法人全体では黒字でも、施設や事業ごとに分けると赤字の部門が見つかることがあります。区分ごとの数字を毎月確認できる形にします。
- 人件費と利用率の月次管理 — 費用の大半を占める人件費の割合や、定員に対する利用率を毎月追い、予算とのずれを早めに把握します。
- 資金繰りと設備投資の計画 — 建物の修繕や建て替え、設備の更新に必要な資金を、積立金と借入でどうまかなうかを計画します。
- 理事会・評議員会への説明資料 — 数字の動きとその理由を、会計の専門家でない役員にも伝わる資料にまとめます。
税理士ができるのは、会計の数字から課題を見つけて打ち手を一緒に考えるところまでです。どこまで踏み込んで支援するかは事務所によって違うので、面談で確かめてください。
社会福祉法人に強い税理士の選び方
- 社会福祉法人の顧問先の件数と種別 — 保育、高齢者介護、障害福祉では、収入の仕組みや資金の使い道のルールが異なります。自法人と同じ種別の顧問先があるかを聞いてみましょう。
- 社会福祉法人会計基準の実務経験 — 拠点区分やサービス区分の設定、附属明細書・財産目録の作成まで対応した経験があるか、社会福祉法人向けの会計ソフトに対応しているかを確認します。
- 指導監査への対応経験 — 監査で指摘されやすい点を知っているか、指摘を受けた後の改善まで支援してもらえるかを聞いてみます。
- 決算の日程に対応できるか — 決算は、監事の監査、理事会、評議員会を経て6月末までに所轄庁へ届け出る必要があり、日程に余裕がありません。3月決算が集中する時期でも対応できる体制かを確認します。
- 経営改善の相談まで乗れるか — 月次で拠点ごとの数字を説明してくれるか、予算づくりから関わってもらえるかは、事務所によって差があります。
社会福祉法人の税理士費用の目安
一般的な法人の相場は、顧問料が月2万〜5万円(年間の売上が1億円以上の場合は月5万円〜)、決算料が15万〜30万円程度です。
ただし、この相場は一般の会社を前提にした目安です。社会福祉法人は拠点ごとの計算書類や附属明細書、財産目録など作る書類が多いため、拠点の数や事業の種類によって金額が変わります。見積もりでは次の点を確認してください。
- 計算書類・附属明細書・財産目録の作成支援が決算料に含まれるか
- 所轄庁へ届け出る書類や、公表用のシステムへの入力をどこまで手伝ってもらえるか
- 指導監査の前の点検や、当日の対応が別料金かどうか
- 記帳を法人側で行うか、任せるか(記帳代行は仕訳の数に比例して料金が上がるのが一般的です)
税理士費用全体の相場は、税理士費用の相場まとめにまとめています。
よくある質問
Q. 施設が1つだけの小さな社会福祉法人でも依頼できますか?
できます。拠点が1つの法人は、作成を省略できる様式があるなど、書類の負担が軽くなる部分もあります。経理の担当者が少ない法人ほど、会計基準に沿った処理を外部の専門家に確認してもらう意味は大きくなります。
Q. 社会福祉法人は法人税がかからないと聞きました。税理士は必要ですか?
法人税がかかるのは収益事業から生じた所得だけですが、税金がかからない法人でも、会計基準に沿った計算書類の作成と所轄庁への届出は毎年必要です。また、職員の給与にかかる源泉所得税や年末調整の手続き、売上の内容によっては消費税の申告もあります。自法人でどの手続きが必要かは、税理士に確認してください。
Q. 公認会計士と税理士のどちらに頼めばいいですか?
会計監査人としての監査は、公認会計士または監査法人しかできません。一方、日々の会計処理の確認、計算書類の作成支援、税務申告は税理士が対応できます。会計監査人の設置が義務づけられていない法人であれば、まずは社会福祉法人の経験がある税理士に相談し、必要な業務の範囲を整理するのがおすすめです。